名古屋高等裁判所 昭和63年(行コ)5号 判決 1988年8月31日
名古屋市名東区本郷三丁目一五九番地
控訴人
近松屋有限会社
右代表者代表取締役
早川佳宏
右訴訟代理人弁護士
二村満
名古屋市千種区振甫町三丁目三二番地
被控訴人
千種税務署長
小林俊夫
右指定代理人
杉垣公基
同
松原道雄
同
花木利明
同
前川晶
右当事者間の法人税更正処分取消等請求控訴事件について、当裁判所は次のとおり判決する。
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
一 当事者の求めた裁判
(控訴人)
原判決を取り消す。
本件を名古屋地方裁判所に指し戻す。
控訴費用は第一、第二審とも被控訴人の負担とする。
(被控訴人)
主文同旨
二 当事者の主張
当事者双方の主張は、次に付加、訂正するほか、原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する。
1 原判決三枚目裏一行目の「九月一一日」を「九月一八日」と、同四枚目表七行目の「郵便業務」を「送達」とそれぞれ改める。
同四枚目表一〇行目の「また、」から末行の「すぎず、」までを次のとおり改める。
「本件裁決書謄本が控訴人に送達された昭和六一年九月一八日当時の代表取締役中川猛は、控訴人の名目的な代表取締役で、非常勤の役員にすぎず、右送達を知り得る立場になかつた。
同四枚目裏六行目の次に行を改めて左のとおり加える。
「従つて、代表取締役中川猛及び総務担当者安永郁夫につき右送達に関し不在等の現実の了知を妨げる事情があつたものというべきである。」
2 控訴人の主張
被控訴人の本件訴えが出訴期間を徒過した不適法なものであるとの主張は、権利の濫用にあたるものというべきである。
本件裁決書謄本の送達されたときの事情は前記のとおりであり、本件訴えの提起はわずか一日出訴期間を徒過したにすぎないことに照らせば、本件訴えを出訴期間の徒過のみをもつて却下することは、憲法で保障された裁判権を奪うものである。
3 被控訴人の認否
控訴人の主張は争う。
三 証拠
本件記録中の原審における書証目録、当審における証人等目録記載のとおりであるから、これを引用する。
理由
当裁判所も、控訴人の本件訴えを却下すべきものと判断するところ、その理由は、次のとおり訂正、付加するほか、原判決理由説示のとおりであるから、これを引用する。
原判決五枚目表五行目の「一項、」を削り、同八行目の「一項」を「四項」と改める。
同六枚目裏九行目の「原告は、」から同一〇行目の「主張しないから」までを削る。
当審証人加藤涌利の証言によつても、右認定を左右するに足りない。
控訴人は本件訴えを出訴期間の経過のみによつて却下することは裁判権を奪うもので被控訴人の主張は権利の濫用にあたる旨主張するが、出訴期間の定めのある訴えにつき、たとえ一日の遅怠であつても不適法として却下を免れないことはいうまでもなく、右却下をもつて裁判権を奪うものといえないことはもちろん、本訴が不適法であるとの主張は、権利の濫用にあたらないから、控訴人の右主張は採用できない。
よつて、右と同旨の原判決は相当であるから、控訴人の本件控訴を棄却し、控訴費用の負担につき民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 黒木美朝 裁判官 宮本増 裁判官 谷口伸夫)